黄金色の風景  2020年7月

7月の丘は暖色の景色が広がる。上旬ごろに色づき始めた麦は次第に丘一面を黄金色に染め上げていき、下旬にはクライマックスを迎えていく。一面を埋め尽くしていた麦は刈り取られ、その場所には徐々にロールが並ぶようになる。

北海道にしては珍しいほどの暑い日が続いていたというのに、突然秋の気配が漂い始めてくるのもこの時期の特徴だ。丘の片隅には萩が咲き、草木の緑はやや暖色に変化を始めている。ふとしたとき、ひんやりとした空気が頬を撫でていくことに気づくのだ。夏を追いかける日々の中、丘に並んでいたロールがなくなると、もう秋の足音が聞こえ始めてくる。

光の質も変わり始め、徐々に空気の流れにも変化が生まれてくる。この日は朝から濃密な霧に丘が覆われていた。日の出とともに温められた霧が動き出し、丘が見え始める。次の瞬間、あたり一面をオレンジ色に染め上げた。僕は光の量をフィルターでコントロールし、夏から秋へと移りゆく光の様子を描き出した。

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中西敏貴:Signs – 風景に潜む気配​