Canon 5D Ⅲ, Canon 11-24mm @18mm, f/13, ISO: 200, SS: 61秒, 180mmホルダー, ND1000

セニヤ島の秋色 – ノルウェー・セニヤ島

動的な雲の対角線の軌跡が、静的な山脈に対してコントラストを形成

この写真はノルウェーで2番目に大きな島、セニヤ島(Senja Island)のBergsborn展望台から撮影した。高台に位置する展望台からは、対岸の静かな村や、宏大な山脈を眺めることができる。素晴らしい景色だ。

この見晴台から広角レンズを使ってその雄大な全景を写した。この写真の各要素は、ちょうど「囲い込み」の構図となっており、湾の海岸線や道路の曲線が山と倒影を囲い込み、見る人の視線を集めることができる。このような囲い込み構図は写真に安定感を与える。

構図上演出の余地はあまりなく、それでも個性的な作品を撮るには、季節や天気、撮影テクニックなどを駆使する必要がある。この写真は秋のゴールデンアワーに撮影した。当時、雲の層が厚く空が暗かったが、突然、太陽の光に雲が破られ、雲を黄金色に染めた。この魔法の時間が出現したのはわずか5分。急いでND1000を取り出し、約1分の露光で素早く流れていた雲を撮った。黄金色の雲と、秋の黄色い葉はとても美しい組み合わせで、写真に温かみを与えている。また、スローシャッターで撮影した雲が対角線の軌跡を作り出したことで、写真に動きと奥行き感が加わり、静的である山脈に対して見事なコントラストを形成している。また、スローシャッターにより水面のさざ波が消え、山脈のリフレクションが強調されている。

この作品は一見簡単に撮れる様に見えるが、ゴールデンアワーの暖かい色合いや、長時間露光による雲の動感がもしこの写真に欠けていたとすれば、単調でつまらない写真となっていただろう。ちなみに、長時間露光は動きのある被写体にのみ有効で、もしこの日、雲がなく、或いは雲が動かなかったら、いくらスローシャッターで撮影しても動きを出すことはできない。

topphoto index
ドクター・リンの写真世界