180mm ホルダー,ND1000 /Canon 5D Mark III, Canon EF 11-24mm f/4L @20mm / f/20, ISO 100, 101秒

ノルウェーで最も美しい漁村 – ノルウェー・ハムナイ

流れる雲の軌跡を使って躍動感を写真に加え、静かな漁村との対照を演出する。

この写真はノルウェーの有名な漁村ハムナイ(Hamnoy)で撮影した。かつては漁師の家と漁船が停泊する港だったが、近年は主に観光や撮影地となっている。心を和ませる景色のハムナイは、ノルウェーで最も美しい漁村と呼ばれ、特に冬は対岸のフィヨルドの山々や漁村が雪に飾られる。

ここの撮影は難しくはないが、細部に注意が必要だ。まず、このスポットの主要な撮影位置は漁村の出口にある橋だが、そのため構図が固定されていて、クリエイティビティに欠ける。ただ、橋の左もしくは右に少し歩くだけで構図の違いが出る。橋の左側では、丁度この作品のように、漁村や対岸のフィヨルドの山々が相対的に分かれ、この様な横並びとなり、景色全体が大きく見える。しかし、橋の右側だと、漁村やフィヨルドの山が同じ垂直線上に置かれるため、縦構図の撮影に適している。この様な考察は風景撮影の基本だが、多くの写真家が見落としがちである。

構図によってクリエイティビティを発揮できないからこそ、この景色を撮影して存在感や個性を出そうとする場合、天気や長時間露光などによる特別な演出が必要だ。太陽が昇る頃のゴールデンアワーには、暖色の柔らかい光が山に照らされ、山の明るい部分と影により立体感が出る。特に冬は大雪が降った後、白雪と真っ黒な山の峰や地面とのコントラストと立体感が更に顕著になる。

ND1000を使用し(露光時間を延ばすことで)、流れる雲の軌跡を使って躍動感を写真に加え、静かな漁村との対照を演出する。同時に、オレンジ色の雲と青い空が冷暖のコントラストとなり、空に奥行きを与えている。水面のさざ波が目立つと写真が煩くなるところを、長時間露光によって滑らかにしている。

私はここに何度も訪れているが、毎回来る度、季節や天気の変化は私に目新しい感覚を与えてくれる。
これが風景撮影の面白さで、季節や天気が変われば、その雰囲気や情感も、また一味違う。

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