180mm ホルダー, ND1000/Canon 5D III , Canon 11-24mm @11mm/ f/20, ISO 100, 240秒

火のように赤いホースシューベンド – アメリカ・アリゾナ州

ゴールデンアワーを長時間露光で撮影し、迫力あるホースシューベンドに「動感」を加えた

ホースシューベンド(Horseshoe Bend)はアリゾナ州・コロラド川がU形に蛇行している場所で、グレンキャニオン国立保養地(Glen Canyon National Recreation Area)に属する観光地の一つである。馬の蹄に形が似ているため、ホースシューベンドと名付けられた。ここの土質は豊富な鉄とマンガンが含まれているため、赤みを帯びたオレンジ色に見える。この作品は、太陽が落ちたばかりのゴールデンアワーに撮影したもので、太陽の角度は低く、厚みの調度良い雲が合わさり、寒色のブルーの光は屈折の為に画面には入らず、残された橘赤色と黄金色の光が雲を照らしていた。
彩度が柔らかく、コントラストの少ない光線は、ちょうど峡谷の色を強め、細部まで階層感に富んでいた。

ホースシューベンドによって地勢は制限され、構図も限られている。この作品の独特な点は、ゴールデンアワーを長時間露光で撮影し、迫力あるホースシューベンドに「動感」という要素を入れたところにある。
まず、11 mmの広角レンズを使用し、曲がりくねった河や岩壁をできる限り構図に全て収めた。この広大な視野はホースシューベンドのU形の魅力を引き出す構図だ。「蹄鉄」を主題として中心点(点)を置き、河の曲線(線)は蹄鉄を包囲し、同時に岩壁の流線模様(線)も蹄鉄へと集まっていて、この二組の「線」は、見る人の視線を主題へと集中させることができる。このような囲み構図は、見る人に安定と和やかな感覚を与えるものの、やや重苦しい。

ちょうどその時、夕焼け雲がゆっくりと移動したので、私はND1000を用い、シャッタースピードを240秒まで落として撮影した。長時間露光撮影をする事により雲が沈滞するのではなく、雲の軌跡が現れ、形成された対角線(線)は、写真に動感と広がりを与え、同時に消失点を形成し、見る人の視線を主題へと誘う。

躍動感のある空(面)と、安定したホースシューベンド(面)とは、動と静の強い対比をなしている。
また三分割法を利用して地平線を上部1/3に置き、「動」と「静」の割合を1:3にした。「静」が構図の占める割合を多くすることで、空の「動」に対し、主題であるホースシューベンドが負けないようにした。

「点、線、面」の構図の三要素で言うと、この作品は一つの「点」、三つの「線」と二つの「面」がある。この三つの「線」のうち、二つは静的で、一つは動的である。また、二つの「面」の一つは静的で、一つは動的である。よく撮影され見慣れた構図であっても、長時間露光を用いることで躍動感のある作品にすることができた。もしそうでなければ、この写真はダイナミックな「線」と「面」が欠けて、単調で味気ないものになっただろう。

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