雨上がり 2019年11月
11月になると、ほとんどの田畑の収穫は終わり、突然色を消失した世界が広がるようになる。この季節からは、風景が撮らせてくれることは決してない。自らの感覚を研ぎ澄ませ、風景に向かっていかなければならないのだ。自然はただそこにあるだけで、決して言葉を発することはなく、淡々と存在している。そこに写真家の心の動きをシンクロさせていく作業が写真なのだが、この霜枯れた季節にこそ写真表現の醍醐味が隠されていると思うのだ。簡単かと言われれば、難しい季節と言えるだろう。しかしながら、個性を発揮できるという意味では、一年で最も楽しい季節なのかもしれない。
雨上がりの朝、丘の上で撮影をした帰り道にこの場所を見つけた。収穫を終えた田圃に昨晩の雨水が溜まっている。ただそれだけの光景なのだが、そこには日の出前の淡い色が写り込み、冷たくもどこか温かい朝の空気感を感じさせてくれた。僕はその感覚をストレートに描くため、反射をコントロールできるPLフィルターをレンズにセットし、輝きを引き出した。