Canon 5D Mark Ⅲ, Canon EF17-40mm f/4L @20mm, f/13, ISO: 320, SS: 245秒, V5ホルダー, ND1000, GND4

スコーグサンデン-ノルウェーで一番美しいビーチ

シンメトリーの構図に対角線を組み合わせた事で、写真に一層の躍動感が生まれた

ノルウェー・ロフォーテン諸島のスコーグサンデン( Skagsanden )ビーチは、間違いなくノルウェーで一番美しい砂浜だ。ここの黄昏の景色は見る人の心を和らげ、夕日の沈むゴールデンアワーには、まるで桃源郷にいるような錯覚を覚える。

この写真では、ND1000と、ソフトGND4を使用した。長時間露光撮影は水面の様々な表情を写し出し、流れや波紋を霧のようし、水面を穏やかにすることが出来る。そうすることで写真の重要な要素である「水」の存在を保ちつつも、雑然とした波紋によって見る人の注意力が逸れることもない。同時に、滑らかな水面はリフレクション効果を強めることもできる。長時間露光撮影をする場合、従来の撮影と比べて、注意しなければならない点が多い。この写真では、水の表現の他に、雲の動きが成否の鍵となっている。撮影前に、雲の移動方向と速度を観察し、雲の軌跡の結果をイメージして構図を決めた。この結果は肉眼では直接見ることができず、長時間露光撮影での挑戦の一つである。スローシャッターで「山の静」と「雲の動」の対比を表現し、夕暮れに染まったピンク色の雲と、空と海の青とが寒暖の対比となっている。

長時間露光で雲が描いた軌跡は、この写真に2つの効果を与えている。外に向かって放射した対角線は、写真に動きを、そして奥行きと立体感を与えている。シンメトリーの構図に対角線を組み合わせた事で、写真に一層の躍動感が生まれた。同時に、雲の軌跡は主役となる山の峰に向かっているようにも見え、この導線が主役を際立たせる効果を生んでいる。そして(左手前の)海草は前景を作り出すとともに、主役へ視線を誘導する補助線ともなっている。

リフレクションは見る人に錯覚をもたらす。完全な対称写真は上下どちらが本物であるかを見分けることが難しい。もし見る人に写真の方向を伝えたければ、例えばこの作品のように、海草を前景に添えることで方向感を示すことができる。

長時間露光撮影を上手く使った作品は、視覚的なインパクトによって、見る人に様々な感覚を誘発する。例えば、衝撃、静けさ、調和、耽美さなど。上述の様々な要素への考慮は、一つも欠かすことができない。

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