雨が季節を運ぶ   2020年5月

桜の季節が終わり、森が新緑に変化したかと思えば数日で緑は濃さを増していく。そのスイッチはいつも何なのだろうと観察しているが、それはきっと雨なのだろうと思う。

5月の北海道はまだ寒さが残るころ。朝晩は氷点下になることもあるほどだから、昼夜の寒暖差が一番大きな頃だといえるだろう。そんな時期に降る雨はなんとなく暖かい。秋に降る冷たい雨とはやはり少し違うのだ。おそらく、自然にとってこの雨は季節を進めるサイン。春が終わり、そろそろ夏へ向かう頃なのだと、雨が教えてくれる。サインを受け取った森は緑を濃くし、夏への備えを始める。

まだ夜明け前の青い時間に丘に立つと、雨雲が次々と流れてゆき、丘をそして山を覆っていくのが見えた。また雨のサインがやってくる。あたりを包み込む空気は湿度をまとい、草の匂いを含んでいる。僕はその様子を写真に残すため、NDフィルターをセットして季節の流れを描いた。

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中西敏貴:Signs – 風景に潜む気配​