カムイミンタラ 2019年9月

今、僕の目の前に見えている光景を「写真」というものに置き換えるとどう変化するのだろう。僕はいつもそう考えて風景を見つめている。人は様々な経験や知識を駆使して物事の空間認識を行い、立体感や遠近感といったことを意識する。しかし、「写真」というのはあくまで二次元でしかない。三次元で意識しているものを二次元に置き換えていく作業が、つまり「写真を撮る」という行為なのだ。しかし、不思議なことに強い「写真」からは、臨場感や躍動感を感じることもあるし、寒さや暑さといった温度感を持った「写真」もある。時には、嬉しさや悲しさ、恐怖までをも写し出す「写真」もある。それこそが「写真」の不思議なところであり、我々写真家を捉えて離さない魅力なのだ。

ある朝、僕は丘の上に立っていた。天候は曇り。しかし上空の雲が川のように激しく流れている。時折顔を見せるカムイミンタラの山々に絡みつく雲の流れを表現したいと考え、長秒露光の手法を利用した表現を試みた。

top|photo index
中西敏貴:Signs – 風景に潜む気配​