Canon 5D Ⅲ, Canon 11-24mm @11mm, f/13, ISO: 320, SS: 245秒, 180mm ホルダー, ND1000

青い台地の日没 – アメリカ・アリゾナ州

構図の優美な作品には、連続した視覚の流れが必要だ

化石の森国立公園(Petrified Forest National Park, Arizona, USA)はアメリカ・アリゾナ州にあり、世界最大の珪化木(植物の化石の一形態)の森林で、無数の珪化木がここで数億年の風化を経て浸食し、まだら模様の盆地に横たわっている。夏のアリゾナ州では季節風が起こる。常に暴風雨が起き、変化の多い天気は劇的な光線を作り出す。撮影の際、太陽が山に沈む時に黒雲が沸き起こり、暴風雨の前兆が見られ、美しい光線と急速に変化する多様な雲が独特の雰囲気を醸し出した。濃い青の黒雲と黄金色の太陽が強烈な冷暖色の対比をなし、空に厚みを与えている。

構図の特徴は、まず奥行きが鮮明であること。はっきりとした前景に、主題、背景が明確だからだ。この作品の主題は、雄大で、色彩豊かな、どこまでも延々と続く、まるでSF映画に出てくる惑星のような盆地である。この盆地の色は、太古の時代に岩に含まれた鉱物の色であり、数億年の風化作用を経て形成された丘陵と干上がった川によって形成された。その唯一無二の景色が作品を興味深いものとしている。前景は三角形や線を隠し持つ岩石で構成され、背景は空である。

構図の優美な作品には、連続した視覚の流れが必要だ。しかもこの作品の視覚の流れは幾つかの線でつながっている。

  1. 前景の岩の線は写真の主題である盆地へと向かっている。見る者の視線を主役へと導く。
  2. 主題である盆地には干上がった川によって形成された線があり、見る者の視線を近辺から無限の深遠な地平線へとゆっくりと誘い、盆地の壮大さを感じさせる。
  3. 第三の線は空にある。ND1000を使用し、245秒の露光で形成された雲の軌跡が、外へと広がる対角線として写真に動きを加え、また同時に主題である盆地への引き込み線としても作用している。本来の静的な風景に対しての動となり、生命力を与えている。

もし構図に前景を含めず、また雲を長時間露光で撮影しなければ、線もなく、連続した視覚の流れもない、面白みのない写真になっていただろう。また、干上がった川による線の配置を考えなかったら、奥行きがなくなり、広大で果てしないこの盆地を表現することができなかっただろう。

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