スコーグサンデンの明暗 – ノルウェー・ロフォーテン諸島
構図の連続性を演出し、視線を牽引して情緒を引き出す
ノルウェー・ロフォーテン諸島のスコーグサンデン(Skagsanden)ビーチ。ここは壮麗な雪山の背景の他、地形の多様な砂浜があり、訪れた写真家は無限の創作空間を見つけることができる。
この作品では、夕暮れの太陽を背にした山嶺と、太陽光が一部の雲を照らしている。ND1000を使用し約4分間露光することで、流れる雲で動きを加え、さらに明暗のコントラストを上げ、写真に奥行きを与えている。低い角度からの撮影は前景から山脈までの距離を圧縮し、その分の空間を空にあて、流れる雲の活動空間をより広くとった。 レタッチでは、配色をモノトーンに抑え、周辺をあえて暗くした。そうすることで圧迫感のある冷淡な雰囲気を演出した。画面をシンプルにするのにも有効な手法でもある。この作品では長時間露光を用いて水面の乱雑な模様を抽象化させているが、それも「写真は引き算」という考え方に基づいた撮影、および編集手法である。
この作品は、大海に流れ込む流線と、その周辺に形成される紋様で前景が構成されている。前景は写真に奥行きをもたらし、見る人を画面に引き込み、その視線を主役へと導く。視線の流れは周辺の水紋に始まり、水流をたどって主役である対岸の山へと導かれ、そして拡散する雲の軌跡によって空へ抜けてゆく。
砂浜を撮る時、砂が柔らかいため三脚は砂の中にめり込みやすい。特に、流れる海水の中に立っているので余計にめり込む。通常の撮影ではそれほど大きな問題ではないが、長時間露光撮影では三脚をしっかりと立てる必要がある。たとえゆっくりでも砂の中に三脚が沈んでいくと、画像がブレてしまう。撮影後はすぐに写真を拡大して、ブレが生じていないか確認するようにしたい。
長時間露光はこの作品で重要な役割を果たしている。雰囲気、動感、明暗のコントラスト、構図の連続性を演出し、1枚の平凡な写真を、視線を牽引して情緒を引き出す良作に変えている。